ごあいさつ
現代企業にとって情報技術の活用はそのビジネスパフォーマンスを左右する必須の要件であると言われています。しかしながら,いたずらに最新の技術を追いかけるような情報技術の導入は,必ずしもビジネスを成功に導くものではありません。むしろ,経営戦略の一環としての,また,組織設計ならびに人的資源管理と連動した的確な情報戦略の中で情報技術への投資とその導入が位置づけられなければなりません。
他方,先進国社会においては,企業倫理への社会的興味が高まり,企業が社会の一員としてその責任を果たすべき存在であることが認識されてきています。情報技術の導入と利用という企業行動においても,企業は倫理的行動主体であることが要求されます。しかし,企業における情報技術の利用が引起しうるさまざまな問題は,往々にして把握しにくく,またその解決は困難です。
こうした認識を持ったとき,企業経営にとって真に有効な情報技術投資のあり方を,企業倫理ならびに情報倫理研究におけるさまざまな知見をふまえつつ,明らかにしていくことは,これからの企業における情報技術の導入と利用にとって重要な課題であることが理解されるでしょう。幸いにして経営情報学会では,情報倫理特設研究部会(2002年度〜2004年度)が情報技術の開発・導入・利用に関する倫理問題を研究した蓄積があり,また本年度より情報投資と経営成果特設研究部会が発足し,積極的な研究活動を展開しています。この両特設研究部会とSCMに関する多面的研究を行っている明治大学グローバルe-SCM研究センターとのジョイントによる本シンポジウムは,この課題への果敢な挑戦であり,経営情報学の新しい一面を切り開く試みです。多数の皆様のご参加をお待ち申し上げております。 |